特別対談『青葉市子 × Mangasick』(日本語)

10/31/2015

 

2015年4月18日、1年ぶりに青葉市子が再びMangasickの地下室にやってきた。彼女は台湾のzine売り場を一通り見たあと、漫画棚側の畳の上に座ってもらった。坂本慎太郎の「幻とのつきあい方」をBGMに、今日の対談を進めた。

 

Mangasick(以下、M):お久しぶりです。

 
青葉市子(以下、青):お久しぶりです。

 
M:今日はインタビューとか対談とかの堅い感じじゃなくて、青葉さんとおしゃべりしましょう(笑)。

 
青:うん、おしゃべり。

 
M:(ノートを開く)うん、なにから話そうかな。

 
青:わ〜、沢山書いてある。

 
M:私たちはネットにある青葉さんのインタビューは全部読みました。

 
青:ほんと??

 
M:それで、音楽に関する質問はもう沢山の人が聞いてしまっているので、私たちが聞く事はあまり多くないです(笑)。

 
青:おしゃべりでいいよ。


 

| 台湾の印象について

 
M:青葉さんは台湾に来るのは2回目ですよね?

 
青:そうです、2回目。

 
M:台湾はどんな印象ですか?

 
青:えーと、樹の生命力がすごい。

 
M:ほんとに?……きっと気候が暑いからかな。

 
青:私たちこんなに流暢に、本当におしゃべりしてるみたいね。

 
M:こんな感じでいいと思います(笑)。話を戻すと、私たちは東京の方が樹が多いと思いますよ。

 
青:本当に?多いというよりは、樹がある所は密集してるからかな。

 
M:例えば公園とか?

 
青:そう。

 
M:だけど、台湾は島が小さいので、台北も当然更に小さいです。自然の環境はあまり無いと感じますが、東京はいくつも大きな公園がありますね。ていうか、青葉さんはもし台北の大安森林公園でライブをやったら最高だと思います。

 
青:昨日も月見ル君想フの寺尾さんと鐵花村のことを話してたの。いつかそこでライブやりたいねって。

 
M:原田郁子さんもそこでライブやりましたよ!

 
青:え?今の原田郁子(中文發音ユエンティエンユィズ)って郁子さんのこと?

 
M:そうです。

 
青:前に彼女から名前の中国語の発音を聞いてたからちょっと憶えてた。原ユエン,田ティエン,郁ユィ,子ズ。

 
M:すごい〜憶えてる。

 
 

M:青葉さんは台湾でライブするのと日本でライブするのは何か違いがありますか?やっぱりお客さんと言葉が通じない?

 
青:言葉が通じないから、気持ちは本当に楽ですよ。

 
M:楽なの?(笑)

 
青:もしみんなが歌詞の意味をわかったら、きっと曲に大して音楽以外の感情を持つと思うけど、言葉が通じない状況だと、私とお客さんが共有するのは声と音楽だけ。すごくシンプル。もしみんなが「これで満足」と思ってくれたらすごく嬉しいな。

 
M:台湾のお客さんは前回のライブを観た後すごく感動してました。歌詞が聞き取れなくても、会場の雰囲気から感じとってましたよ。

 
青:よかった。「説明しなくても伝わる」っていいなと思ってて、言葉は情報だから、情報が多くなれば受け手は本当に大切な事以外も考えちゃうから。

 
M:うん、私たちもそう思う。こないだのライブを観た感想は、まるで森林や水晶のように自然が生み出したものを見ているようで、私たちが普段聞いているライブとは全く違ったものでした。

 

 

| 各国の音について

 
M:この「0」というアルバムの中の2曲はトンネルの入り口からトンネルの中で録音したとのことですが、こないだ台湾に来た時もフィールドレコーディングをしていたと聞きました。台湾で録りたい音はありますか?青葉さんにとって台湾を代表する音と言えば何ですか?

 
青:台湾の音か……街の中で代表的な音といえば、「ブーン」(バイクのアクセルグリップをひねる動き)。

 
M:確かに(笑)。

 
青:もっと録音してサウンドエフェクトを作りたいの。例えば、郊外で夕立の音を録りたい。前に寶藏巖を散歩してた時に突然雨が降って来て、雨粒が樹に当たる音がすごく良かったの。すぐにレコーダーでしばらく録音した。

 
M:そしたら他の国にライブで行った時は何を録音しますか?例えばタイに行った時とかは?

 
青:タイ……あ、鳥の鳴き声、どこでも鳥の鳴き声は録音したいな。

 
M:鳥の鳴き声、いいですね!

 
青:昨日道を歩いてたら日本には居ない動物の鳴き声が聴こえて、もしかしたら誰か口笛を吹いているのかと思った。

 
M:やっぱり鳥だ(笑)。小さい時に漫画を見るたびに、漫画家がカラスの鳴き声を「アホー」って描いてて、台湾にはカラスはいないから鳴き声を聞く事は難しかったんだけど、大人になって日本に行ってから、やっと本当に似てるってわかりました。

 
青:確かに、カラスの中には「カー、カー」と鳴かないのもいるけど、カラスは人の声を真似する事ができるよ。私のおばあちゃんの家の近くに何年も住み着いているカラスは、「ハクション」て鳴いたり、おじいさんのマネをして「オカーサン」って鳴いてるのもいたの。

 
M:うわー賢い!台湾はカラスは居なくてスズメが多いです。朝早くからチュチュチュって鳴いて、本当にうるさい(笑)。

 
青:台湾の人はスズメも食べるの?

 
M:はい。

 
青:中国は?

 
月見ル君想フ(以下、月):たぶん。日本でも食べますね。

 
青:うん、京都の伏見稲荷の中とかスズメ焼きあるね。

 
M:へー、だけど台湾はスズメより鳩を食べる人の方が多いかな。

 
月:アグネス・チャンも鳩が好きで、日本で鳩を見たびに食べたくなるらしいです。

 

(一同笑)

 

 
 

| 漫画について

 
M:私たちは漫画のお店なので、やっぱり少し漫画の話をしたいと思います。青葉さんは何年か前のインタビューで言っていた当時唯一もっていた漫画の本は……

 
青:市川春子①の<虫と歌>。あ、ここにある(本棚から出して来る)。

 
M:でも今はもっと沢山持ってますよね?オススメの作品はありますか?

 
青:(立ち上がって)あ、私これ持ってる、これも、これも(鈴木翁二②、冬野Saho③、高野文子④等作者の本を指す)、あとこれも。

 
M:あ、近藤聡乃⑤さんの作品ですね

 
青:彼女大好き。

 
M:私たちも!

 
青:あともう一冊、ここには多分ない、スケッチ集なんだけど。

 
M:私たちが持ってるのはこの本だけです(《近藤聡乃作品集》を持ってくる)。

 
青:私も持ってる。私も好きです。だけど私が言ってたのは別の分厚いやつです。(註:《近藤聡乃スケッチ原画集KiyaKiya》)。

 
M:近藤聰乃さんがNUUAMMのジャケットを描いたと知った時はすごく嬉しかったです!

 
青:NUUAMMを一緒にやってるMahitoは私は彼女が描く人にそっくりだと言って、彼女を知ってるかと聞くので。私は彼女の作品を持っていて、さっき言ってたスケッチ集を彼に見せたの。その後、私たちはニューヨークにいた近藤さんに手紙を書く事に決めて、彼女から返信をもらえたの。

 
M:本当にすごい。

 
青:私は彼女も好きだよ(今日マチ子⑥の作品を取り出して来る)。

 
M:彼女の漫画を見ると青葉さんの歌を思い出します。

 
青:感覚が似てる所があるんだと思う。今になって沢山持ってきたいものを思いついた。すぐ日本に行って取って来たい。

 
M:(大笑)

 
青:マームとジプシー劇団⑦のパンフレットとか、毎回デザインがすごく凝っていて、表紙にドライフラワーが挟んであるものだったり、ミシンを使って車線を入れてたり、やっぱり持ってくれば良かった。

 
M:素敵。ここにある漫画は台湾版が出版されるのが難しいと思う作品で、どうやって台湾の読者にオススメすればいいかをずっと考えてますね。

 
 

| ジャンルを超えたコラボレーションについて

 
青:台湾の人はあまりCD買わないの?

 
M:日本に比べるとCD文化の盛り上がりは少ないですね。

 
青:昨日聞いたんだけど、テープを買う人が多いって。

 
M:うん、テープとアナログレコードを買う人は増えてはいますね。

 
青:日本では、こういう(漫画)作品は大体音楽と共同でなにか企画する事が多いですね。例えば知久さん⑧とNUUAMMは近藤聡乃さんとコラボレーションしたり、舞台の《coccon》は原田郁子さんに劇伴をお願いしたり。私たちは漫画と音楽を一緒に広める事ができる。

 
M:台湾ではこういう共同企画はまだ少ないですね。ただ、私たちが漫画を紹介する時は、確かに青葉さんが言った様に、「誰それの音楽作品のジャケットを描いた誰」とか背景の知識も紹介します。例えば高野文子先生があがた森魚⑨さんのアルバムジャケットを描いた、とか。

 
青:たしかに、アルバムのジャケットを描いた漫画家さんはものすごく多いはず。

 
M:私たちもこういうのはとても良いと思います。例えば、今日マチ子先生が好きな人は、彼女がなんのアルバムのジャケットを描いたか興味を持って、さらにはその音楽作品そのものに興味を持てば、知ってる事がどんどん多くなります。ただ、台湾は各ジャンルの棲み分けがハッキリ分かれているので、舞台が好きな人は、恐らくそのジャンル内の事しか気にしないんだと思います。

 
青:日本のファッション、音楽、劇場、漫画、小説の各ジャンルはそれぞれ分かれているように見えるけど、いろんな繋がりや付き合いがあって、思いもよらないところでコラボレーションがあったりするの。劇を作る人がライブを見に行ったり、ファッションデザイナーが他のジャンルの人の衣服を製作したり。

 
M:なんて健全な文化なんでしょう(笑)。

 
青:違うジャンルの人と一緒にやる時は、それぞれの表現の仕方が違う事に気づくんだけど、言いたい事や伝えたい事が同じ方を向いていればうまく行きますね。

 
 

| 言語外の感覚について

 
M:ここまで話して、私たちは青葉市子さんが先ほど話した「説明しなくても伝わる」という事なんですが、実は私たちがガロ系の漫画を読んでいる時も似たような感覚があるんです。私たちの日本語は全部の台詞の内容をわかるほどではないのですが、なので例えば、鈴木翁二先生の作品や70年代の劇画漫画を読んでいる時は、実際いわゆる物語を読んでいるというよりは、一つの絵が表す……

 
青:雰囲気。

 
M:私が最初に鈴木翁二先生の作品を開いた時、宇宙に入って行くような感覚で、流れ星の様なものが見えたんです。ただ、台湾人は比較的起承転結がハッキリしている物語が好きなんです。楽曲で例えるなら、台湾人が一曲の歌を好きだと言う場合、大体「歌詞」が好きという事を指しているのですが、一曲の歌の中にはもちろん歌詞だけではなくて歌詞では表せない気持ちが曲にはあります。私たちが漫画を読む時は物語と絵の関係まで感じています、もしかしたら音楽を聴くときに歌詞と曲の関係を感じる事に似ている所があるかも知れません。私たちのこの先の課題は、台湾の読者に向けてこの種の漫画の面白い所はどこなのか?という所を説明し続けることです。

 
青:ここは台湾の人にとって、日本のビレッジバンガードみたいな所なのかな?

 
M:(笑)高雄にもビレッジバンガードの支店がありますよ、だけど日本とは全然違うと思ってます。

 
青:ここはもっと刺激が強いかな?

 
月:けどここに来たら……

 
青:なんとも言えない安心感。

 
M:謝謝~~~(泣)。

 
青:避難所みたいだね。疲れた時もここに来れば平気そう。

 
M:謝謝~~~この本棚をみて驚く日本人は少なくないです。だけど実際作品を読んでから買ってくるのは難しくて、表紙と中のページ構成が私たちにとって衝撃的な作品を選んで買ってきます。

 
青:日本人として、私もチラッと見ても個性がなかったり、または説明書きが細か過ぎる作品はあまり好きじゃないです。私の好みの問題だけど、今日マチ子さんも好きだし、近藤聰乃さんも好きだし、市川春子さんも好きだし、彼女達の作品は説明っぽくなくて、ただ物語の舞台の中での感覚を描いていて、撮影と同じ様な感じ。だから言葉が通じなくても感じ取れるところがあるの。

 
M:まるで日本人と台湾人の性格の違いみたい(笑)。台湾人は「説明」を欲しがるんです。この作品、この絵、この歌の背景にはどんな意味があるのかを聞いて、明確な答えを期待します。なので台湾人の読者の中には私たちの日本漫画は一切読まない人もいます。「日本語がわからない」事が大きな原因ではなく「漫画がわからない」、といえるかも知れません。だけど、多くの台湾のクリエーターがここに来てこれらの日本漫画を読んでいて、それは本当に嬉しい事です。

 
 

| ZINEと絵を描く事について

 
M:あと、青葉さんの描く絵は面白いですね。

 
青:(笑)

 
M:どうして「剃刀乙女」の初版に小さな絵本を付けようと思ったのですか?その後はもうやってないみたいですが。

 
青:あの時絵本を描いたのは、描くのが楽しかったからたまたま趣味で描いていた絵本を当時のレーベルの人が見て、良いねって言ったの。

 
M:(笑)

 
青:それで初版限定の付録にしたの。あと、一曲書く事を勧められて、〈光蜥蜴〉を書いたの。

 
M:ZINEは作りたいと思いますか?

 
青:まさにちょうどなんだけど、今年の6月に「人zine展」というイベントに参加するの。「人zine」の日本語の発音は人参と一緒で言葉遊びなんだけど。17人くらいの参加者は大体ミュージシャンで、みんなZINEを作った事が無い人で、みんなで一緒に自分の最初のZINEを作って展示するというイベント。

 
M:みたい!

 
青:(トートバックを持って来て、スマホを見る)

 
M:あ、これWisut Ponnimit⑩(のトート)。

 
青:あ、そうだよ。フライヤーが今無いんだけど、ナタリーに載ってたの。(携帯で探す)あ、このアルバムオススメ。だけど今の話とは関係ないよ。ゑでぃまぁこん⑪の「カミナリデンゴン」。

 
M:デザインカッコいい!あとで聴いてみたい。

 
青:うん、聴いてみて。

 
M:これはあの映像クリエーターとミュージシャンのコラボしたという作品ですか?

 
青:ちがうの、だけどこのデザインはNUUAMMのアルバムをデザインした「GRAPH」という会社が作ったの。去年のツアーの時、どこに行くのも持って行って、たまにライブの前に聴いてたの。

 
M:うん。

 
青:あ(スマホ画面を指す)、人zine展。

 
M:マヒトさんが主催のイベントなんですね。

 
青:そう、彼が企画したの。この参加してるバンドを聴いた事あるかな?BO NINGEN、快速東京、Tenniscoatsとか。

 
M:聴いた事あるのもあるし、名前聴いた事あるのもあります。

 
青:私も参加するの。だからこれ(Mangasickの本棚の台灣zineを指して)はすごく興味がある。

 
M:なるほど。人zine展の参加作品は販売しますか?

 
青:売る人もいるし、売らない人もいる。

 
M:青葉さんは?

 
青:またここに持ってくるよ。

 
M:やった!もし良ければ、販売したいです。

 
青:一冊ずつ作ろうと思ってて、沢山できたらまた持ってくるね。

 
M:ありがとう!手作りのzineは面白いですね。

 
青:沢山写真を入れようと思ってるの。

 
M:うん。私たちもお店を開いてからZINEに触れる事が多くなって、ハマりました。そしてZINEを作っている沢山の友達と知り合えました。彼らは5月末に台湾ZINE販売会に参加しますよ。

 
青:ほんとに?5月末?

 
M:三十、三十一日。

 
青:人zine展は六月六日に始まるから、ほとんど同じ時期だね。台湾と日本の両方のイベントを一緒にできたらいいね。

 
M:そうです、前に仙台の古本屋の「火星の庭」の店長が来た時にもそういう話になりました。

 
青:日本のユトレヒト⑫というお店も沢山ZINE置いてあって、前にタム君と吉本ばななさんの座談会をやったの。

 
M:面白そう、その二人!私たちは中野TACO chéという本屋さんと交流があって、そこから日本のZINEを入れる以外に、台湾のZINEを彼らに推薦したりしてます。なので今TACO chéではいくつかの台湾人の作品が買えます。

 
青:良い事聞いた、行ってみよう。

 
M:やっぱり青葉さんの漫画も見たいですね(笑)。

 
青:私も描きたい。時間があれば、マネージャーの木場さんの漫画をすごく描きたいの。彼女本当に面白くて。タイトルは《木場ちゃん!》。

 
M:四コマ漫画ですか?(笑)

 
青:ううん、ストーリーはそんなに無くて。表紙はもうできてるんだけど。

 
M:良く描けてる!(大笑)

 
木場:(スマホを見せて)これは青葉さんが前に描いてくれた私の絵です。

 
M:すごい!「行け!木場ちゃん」。実は私は(店長の老B)、前に同人誌を描いてたんですが、でも描くのが上手くなくて……

 
青:自分で上手くないって思うの?

 
M:そうです、なので自信がなくなってからもう描かなかったけど、このお店が開店してから色んな作品をみて、刺激をもらって、漫画の表現は本当に自由で、描くのが下手なのはそんなに問題じゃないってわかったんです。

 
青:うん。

 
M:これはまさに私が最近描いたものです。去年私たちは漫畫家の駕籠真太郎さんの個展を開催しました。彼を紹介するZINEを作って、後ろに付録で付ける漫画として描きました。

 
青:(空港でのお迎えの場面を指して)あ、震えてる。

 
M:本当に震えました!これは私の約7年振りの作品です。

 
青:すごいね、自分の周りに起こった事を漫画にするのは良いと思う。

 
M:中の部分は印刷に出して、外側は手作りで仕上げました。

 
青:デザインも自分でやったの?

 
M:そう。「デザイン」というと大げさかもしれませんが(笑)。エログロの要素がある作品を見るのが怖くて、気持ち悪いという台湾人もいます……

 
青:(壁の上の丸尾末廣のポスターを指して)

 
M:そうそう。一方でこういう作品を好きなひともいて、見た目は恐怖であったり気持ち悪さの表現だったりするけど、見た人が嫌がるような要素は作品の一番重要な核心ではなく潜在的にある純粋な感情こそが素晴らしいと思ってます。なのでこのZINEを作る時に、赤ちゃんが人形で遊ぶ写真を選んだんです。

 
青:いいアイデアだね。

 

 

| Mangasickの青葉市子の音楽への感想

 
M:私たちは青葉さんの美しい音楽の底には深く暗い部分があると思っています。

 
青、月:うん。

 
青:私が比較的詳しい各シーンのクリエイターはみんなそう。服飾のデザイナーもそうだし、演劇界の人もそう。彼らは完璧に綺麗にとか、ただ怖いだけの作品は作らず、一見綺麗だったり、怖かったりするけど、核心の所はみんな共通したものを持ってて。

 
M:「0」のアルバムは、光と影の部分が共存している感じが特に強いですね。

 
青:そう言ってくれて本当に嬉しい。

 
M:「剃刀乙女」の時は、まるで芽が出たばかりの小さい種の様で、確固たる意思あるけど脆さもあって、「0」になってたくましい大きな木になった感じ。木の下には木陰があったり、いろんな動物が木に登ったりして。この成長の過程にすごく感動しました。

 
青:ありがとう。ここまで話してきて、お二人が私に対して思ってくれている事を聞いたら、今まで自分では気づかなかった事がわかったの。例えば種が大きい木になるっていう表現。今までそう言う感覚は無くて、なぜなら私の心の中にはいつも「さあ次何をしよう」というのがあって。だけどこの日本人ではないお二人の細やかに私の事を語ってくれるのを聞いて、ホッとしたというか、よかった、私のやってきたことは間違ってなかったんだってわかったの。ありがとう。

 
M:私たちに今回の機会を作ってくれた寺尾さんありがとう(笑)。最初このインタビューの話を彼から聞いたとき、私たちにできるの?って思ってたけど、青葉さんの音楽が本当に好きだし、お店ではずっとNUUAMMとライブアルバムの「青葉市子と妖精たち:ラヂヲ」をかけていて、特にNUUAMMのアルバムには音楽以外の沢山の音も入っていて好きです。お店でかける度に音楽とこの空間が融合してる感じがするんです。

 
青:よかった。ありがとう。私たちがあのアルバムを作った時の心境は「子供が砂場で遊んでて、持ってるおもちゃで遊んでいる」という感覚で、私たちは綺麗でカッコいいものを作ろうというのではなく、この感覚を意識するようにしたの。

 
M:うんうん。この世界に青葉さんの音楽があって本当に良かったです。

 

 

| 1人で演奏するのと一緒に演奏するのとの違い

 
M:青葉さんは今までに多くのミュージシャンと一緒に演奏していますが、一緒に演奏するのは、自分だけの演奏とどんな違いがあると感じてますか?

 
青:うーん、なんて言えばいいかな?私自信が全く別の人間になる感じかな。1人でライブする時は孤独で、周りには人が居ない、だから曲を作った時の気持ちをそのままステージにもっていける。でも他の人と一緒にライブをする時は全く違う感じで、音楽でコミュニケーションするのが「楽しい!」。

 
M:ははは〜。他の人と一緒に演奏をする時はその人の状態を見てないといけないから、音をあわせる時はパズルみたいな感じですよね。

 
青:確かに。その人の音楽に足りてる音と足りない音が何なのかを理解して、その人が足りない音が私が持ってたら私が加えて、私が持っていないものをその人が持ってたらその人に加えてもらう。交換する感じ。もしお互いがどちらも持っていたら、私は出さない。だけどNUUAMMは特別で、一緒にやってる感じで、1人が分裂して2人になったみたいな感じ。

 
M:あ、だからアルバムのジャケットはあの絵になったんですね。

 
青:髪がつながってる部分かな?だけど私たちはこの考えを近藤さんには伝えてなかったの。

 
M:本当に?彼女はすごい……

 
青:本当にすごい。私たちは彼女に、私たちは二人組としか伝えてなくて、その後に音源を送って聴いてもらって、印象を絵に描いてもらったら、髪の毛が繋がった絵になってたの。

 
M:感動です……あ、時間もそろそろですね。今日はこのような形で青葉さんとお話できて本当にうれしかったです。

青:謝謝。

 

 

注釈:

1.市川春子:2006年「虫と歌」にてアフタヌーン四季賞2006年夏の四季大賞を受賞しデビュー。翌年から『月刊アフタヌーン』(講談社)において読み切り作品が数度に渡り掲載される。2009年11月20日にそれらの読み切り作品を収めた短編集である初の単行本『虫と歌』が刊行、同書で第14回手塚治虫文化賞新生賞受賞。

 
2.鈴木翁二:70年代に月刊「GARO」にて活躍した漫画家。つげ義春に多くの影響を受け、安部慎一、古川益三と並び「GARO三羽烏」と称される。代表作に映画化された『オートバイ少女』など。

 
3.冬野Saho:冬野さほ、漫画家、岡崎京子に師事、夫は松本大洋。少女漫画家として出発したが、後に一般的な漫画とはかなり異なったコマ割りや前衛的な描写を開拓。近年はイラストレーターとしての作品が多い。

 
4.高野文子:80年代の最も重要なニューウェーブ漫画の代表的作家の1人。後の漫画界に与えた影響は大きい。強弱のない単純な線と独特な演出方法、一読では理解しがたい心理描写などが特長とされる、有評論稱其作品為「視覺性最強的漫畫」。デビュー30数年で7冊の出版のみ。斬新な表現手法多数。

 
5.近藤聡乃:漫画家、芸術家、ニューヨーク在住。主に少女と虫をテーマにした、白黒を基調としたコントラストで幻想的な作品を中心としている。知久寿焼(元たま)の楽曲をモチーフにした2002年のアニメーション作品『電車かもしれない』がBShi『デジタル・スタジアム』で紹介されて話題を呼ぶ。2006年にも個展「てんとう虫のおとむらい」でアニメーション作品を発表。

 
6.今日マチ子、漫画家。在学時より長期に渡り自費出版を続けた1ページのフリーペーパー「Juicy Fruits」やZINEの制作も多数。2004年より自身のブログではじめた1ページ漫画シリーズ『センネン画報』が口コミで評判となり人気を得る。雑誌連載作品に『みかこさん』『cocoon』『アノネ、』など多数。

 
7.マームとジプシー:07年設立の劇団、腳本は全て藤田貴大による。2013年今日マチ子の漫画「COCOON」を編集し上演、音楽監督は原田郁子。2015年青葉市子も出演する。

 
8.知久寿焼:90年代に一世を風靡したバンド「たま」のフロントマン。アコースティックギターとユニークな歌声でアコースティッで独自の世界観を持つ楽曲を歌う。

 
9.あがた森魚:フォーク歌手、一九七二年に林静一の同名漫画を題材とした「赤色エレジー」が話題となる、隔年將漫畫翻拍成電影、自編自導自演、製片和配樂工作也一肩扛下。

 
10.Wisut Ponnimit(タムくん):タイの漫画家。オリジナルキャラクターの「マムアンちゃん」のテーマ展を台湾でも開催。日本漫画の影響を色濃く受けている。近年は日本での活動も多く、タイと日本での連載作品を持っている。「透明雜誌FOREVER」のMVは彼のアニメ作品である。

 
11.ゑでぃまぁこん:ゑでゐ鼓雨磨と柔流まぁこんにより結成されたバンド。温かみのある女性ボーカルとシンプルな楽曲で、あくまで自然体にメロウな雰囲気を醸し出している。

 
12.UTRECHT:開業10年以上、世界各国の本やZINEをセレクトして販売する他、出版や書店でのイベント企画等も行う。さらには、アジアで最大級のインディーズブックフェアである「Tokyo Art Book Fair」を主催。渋谷地区の重要な書店である。


 

青葉市子がmangasickにて購入したZINE

L2C『Albums you must hear before you die』
購入した理由:センスがあるのと、面白そうだったから(笑)

Black Rainbow『A day』
購入した理由:この本は画力はそんなに高くないけれど、伝えようとしてることはすごく好き。このページでは見た所男の子が寂しそうにしてるけど、このページで表してるのは、実は彼の目には世界はとてもカラフルに映っているということで、私の小さい頃の感覚に似てて、みんなが楽しそうにしてるときに私はいつもはじっこから見てるだけて、特に反応もないのね。そばに居る人は私の事をひとりぼっちの子供だと思ってるんだけど、私の心の中では、もし彼らと一緒に遊べたら楽しいんだろうな、と思い描いてたりして。こういう風に考える人もきっと多いと思う。うん、だから私はこのZINEを見ている時が好きなの。

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